書評について~川嶋先生寄稿~

書評について

 

書評とは、読んで字のごとく、ある書籍を評価した文章のことを意味します。もうちょっと詳しく書くと

①【内容紹介】その本の内容を紹介しつつ

②【内容評価】その本の内容や主張について批評や批判、評価すべき点や不足している点、学術的な本で言えば、その本の学術的価値について評価する文章のことです。

 

一般的な書評の書き方については、書評の書き方を扱った本もありますし、もしくは「書評 書き方」で検索すると沢山ページが出てきますので、そういうのも参考にしてもらえればと思います。

 

 

ただし、ゼミ試に当たって提出してもらうものには、以下の点を盛り込んでもらうと読む側にとって評価しやすくなると思います。

その本を取り上げた理由:書評は、「自分がゼミ入室後研究したいテーマに沿った、国際関係、政治、近現代史に関する学術的書物(文庫・新書を含む)を一冊書評したもの」(2019年度政治経済学部専門演習要項、16頁より)としてお願いしてあります。ですので、そもそも自分がどうしてテーマに興味があるのか、そのテーマに沿ってどうしてその文献を取り上げることに行き着いたのかを書いてもらえると、大変助かります。

 

内容についてのまとめ:内容についてまとめた箇所を次に書きます。あまりダラダラと書くと印象が悪くなるので、簡にして要を得たまとめにすると評価が高くなります。

 

内容に対する評価:その本の内容への評価を最後に書くこととなりますが、批評、批判というのは、単なる感想ではありません。筆者がその本で書いている内容がどの程度的を射たものであるのか、その本で書かれていることの何が評価されるのか、学問的特徴はどういったものがあり、どのような新しさがあるのか、といった内容が盛り込まれると評価が高くなります。

 

一つ気をつけてほしいのは、その本のテーマについて自分の考えを書くことは、書評ではメインの作業ではないことです。その本で取り扱われているテーマ(題材)を本の筆者がどのように料理しているのかについて、その料理が果たしてうまいのかまずいのかを書くのが書評です。そのテーマ(題材)を自分がどう考えるのか、という点は正面から書評に盛り込むものではありません。どうしても盛り込みたい場合は、本の筆者が唱えている内容に対比する形で書く必要があります。

 

 とはいえ、実際問題として、学問的新しさがどのようなものがあるのかを書くことは難しいでしょう。文庫や新書を対象とした場合、そもそもその本に学問的な新規性がない場合もあるからです。ですから、その本の特徴(ないしは本全体の主張)を自分はどう捉えるのか、その特徴(主張)に対して自分はどう評価するかを盛り込むことが必要になってくるかと思います。

 

 書評を書いてもらう理由について触れておきます。書評を書いてもらう最大の理由は、まずそもそもゼミへの応募者が何かしら学びたい何かがあるかどうかを図ることができること、次に書評を読むと、なぜその学問分野に興味があるのか、どれくらい興味があってどれくらいこれまで調べたことがあるのか、どう評価する能力があるかを簡便に知ることができるからです。これまでは入室後に学びたいことと興味ある国際問題レポートという形にしてきましたが、書評はこの二つをアカデミックにも一つにまとめられるのではないかと思い導入しました。ご理解いただき、入室希望の方は全力で取り組んでいただければ幸甚です。

 

 最後に評価について。多くの人にとって初めて書評を書くことになると思いますので、実際のところ、中々うまくは行かないと思います。ですので、上手く書けなかったからと言って、それだけを理由に落とす、ということをするつもりはありません。しかし反面、大変準備をしてよく書けている書評には、それ相応の評価をしたいと思っています。それは、身上書についても、同じことが言えると思いますし、上手く書けなかったら、書ききれなかったこと、書いたつもりだったが伝わっていなかったことを、面接で伝えて頂ければ、充分挽回する可能性があると思っています。